Susie Cooper Teapot “Dresden Spray”- Green, Crown Works Burslem (c.1935–40)

スージークーパー　ティーポット　“ドレスデンスプレイ（グリーン）”
手描き、 クラウンワークス期（1930年代後半）

スージー・クーパー（Susie Cooper）は、20世紀英国を代表する陶器デザイナーのひとりです。“The Potteries（陶器の里）”と呼ばれる、イングランド中部スタッフォードシャー州ストーク・オン・トレントに生まれ、幼い頃から絵を描くことに親しんで育ちました。

地元の美術学校で学んだのち、若くして名門 A.E. Gray社 に装飾画家として迎えられ、その才能は瞬く間に高く評価されます。ほどなくデザイン全般を任される存在となり、スージー・クーパーの名は業界内外に広く知られるようになりました。

1929年頃、A.E. Gray社の理解と後押しを受けて独立し、空き工場であった Crown Works（クラウン・ワークス） を拠点に、自身の名を冠した工房を設立します。「形（Shape）からデザインしたい」という長年の想いを叶え、成形から絵付けまでを一貫して手がける、当時としては革新的な制作スタイルを確立しました。この工房から、スージーらしい柔らかく詩情あふれるフローラルデザインが数多く生み出されていきます。

こちらは、日本では一般に “Dresden Spray（ドレスデン・スプレイ）” と呼ばれている、小花を散らした可憐なフローラルデザインのティーポットです。“Dresden（ドレスデン）”とは、ドイツの陶磁器産地に由来する言葉で、19世紀末から20世紀初頭にかけて「小花散らし」を意味する業界用語として用いられていました。このようなデザインは当時たいへん人気があり、現在でもスージー・クーパー作品の中でも特に愛好家の多いスタイルのひとつです。

底部のバックスタンプや刻印から、本作は 1930年代後半〜1940年代初頭（Crown Works期） に制作されたものと考えられます。六角形の刻印は、当時用いられていた シェイプ（形状）管理のための番号で、スージー・クーパーが成形そのものにも強い関心を持っていたことを示す要素のひとつです。また、手書きで記された数字は、当時の製造・装飾管理のために用いられた記号と考えられ、ハンドクラフト色の強い時代背景を今に伝えています。

本作は転写ではなく、ひとつひとつ手描きによって装飾された作品です。花や葉の輪郭線、色の濃淡、配置には微妙な揺らぎがあり、同じデザインであっても、ふたつとしてまったく同じ表情のものは存在しません。この不均一さこそが、ハンドペイントならではの大きな魅力です。

全体としては、貫入もほとんど見られない非常に良好なコンディションを保っていますが、蓋を外した開口部の縁に小さなチップが一箇所ございます。

柔らかなグリーンを基調に、可憐な花々が揺れるように描かれた佇まいは、インテリアとしても非常に印象的です。花器としてドライフラワーや木の実を添えたり、小さめの観葉植物の鉢カバーとしてお使いいただくのもおすすめです。

静かな存在感が、空間にやさしい彩りを添えてくれます。

 

【サイズ・仕様】

• 高さ約11cm   口径約7.5cm   注ぎ口からハンドルまで約20cm

【コンディション】

• 本体開口部の縁にチップがございます。

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